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眼からウロコの人事評価―第4回 人事評価からパフォーマンス・マネジメントへ
2015.04.30
人事評価からパフォーマンス・マネジメントへ
近年「人事評価からパフォーマンス・マネジメントへ」ということが言われています。評価の目的が、単に昇給や昇進といった処遇を決めること
にとどまらず、「成果の管理」、つまり人の能力を開発したり、成果を促す行動を促したりすることに転換してきているという意味です。神戸大学大学院教授の高橋潔氏はこれを人事評価のパラダイムシフト(支配的な考え方が劇的に変化すること)であると述べています。
たしかに、いまや正社員といえども40歳以上の層にはほとんど昇給がありません。昇進はさらに少なく、定年まで平社員という人も珍しくなくなりました。賞与という制度は残っているものの、その金額は賃金以上に速いテンポで下がっています。あるかないかわからない昇進や、僅かばかりの昇給・賞与格差のために血道を上げてはいられないという感覚を持つ人が出てきても不思議ではありません。決めるべき処遇のメニューが限られてきています。
人事アセスメント3.0
高橋潔氏は、「人事アセスメント3.0」ということを提唱しています。勤怠・勤続の記録を中心とする「人事アセスメント1.0」から、成果や行動の評価によってインセンティブを与える「人事アセスメント2.0」を経て、業績のコーチングやパフォーマンスのマネジメントに資する「人事アセスメント3.0」へという流れです。バブル崩壊以前の、永年・長時間働いておりさえすれば良しとした評価から、バブル崩壊後は、ただ働いているだけではだめで、成果を厳しく問う評価へ。21世紀以降は評価を全社的な業績向上のための手段として利用する時代になったという意味です。
それでは評価における不条理を小さくするために何ができるのか、全社的な業績の向上にくみする評価とはどういうものなのか、これについて次回以降考えてゆくことにします。
*参考文献
高橋潔『人事評価を効果的に機能させるための心理学からの論点』(「日本労働研究雑誌」2011年12月号所収)
高橋潔『人事評価の総合価額-努力と能力と行動の評価』(白桃書房、2010年)