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眼からウロコの人事評価―第7回 「社員による好ましくない反応」という問題

2015.07.07

  • 社員による好ましくない反応

アメリカのある市で、議会が警察の評価指標としてパトカーの走行距離を用いたために、警察官が1日中高速道路を行き来していたという話があります 。旧ソ連では、(事実かどうか不明ですが)鉄工所の評価を製品の重量で行ったために、工場が巨大な1本の釘を作ったという話があります 。

 

MBOではよく、達成率を上げるために、社員があえて低い目標を立ててくるということが指摘されます。愚かなことのように思えますが、社員にしてみれば、自分がやらなければ同僚が同じことをやるかもしれませんから、やるのが合理的な行動です。

 

こうした問題行動には解決策があります。MBOの話で言えば、難度をかませて業績を「難度×達成率」で評価すれば済む話です。それができないのは会社が、いったん決めた評価指標を改定するのは、それまでの制度に欠陥があったことを認めることになるという意識を持っているからです。

 

しかし、これだけ移り変わりが速い世の中で、いったん作った評価制度の賞味期間が長いはずがありません。神戸大学大学院教授で組織行動論が専門の高橋潔氏は「人事評価の9つの急所(へそ)」のひとつとして「人事評価には頻繁なモデルチェンジが必要になる」ということをあげています。

 

 評価される側の不公正感

どれほど公正に評価しようとも、低く評価された人が不公正感を持つことは避けられません。高く評価された人は満足しており、差し引きすれば満足感の方が勝っているかもしれませんが、それだから不公正感を放置しておいて良いということにはなりません。

 

評価の結果に対する不満を小さくするためには、①評価の前に被評価者から意見を求めること、②評価面接で評価者・被評価者とも十分に意見を述べること、③異議申し立てができること、④評価者が被評価者の仕事の内容をよく知っていること、⑤一貫した評価基準を用いることなどが有効です 。

 

先に述べたことと関連しますが、評価者の負担で大きいのは精神的なものなので、逃げ道は、面接やフィードバックをいい加減にやることでなく、これらをいっさい行わないということになりがちです。

 

目標説明の実施率は高いが、面接と結果の通知は、すべての評価者が実行しているわけではないという研究結果があります 。人事部は評価の過程が正しく行われているかどうか、定期的に検査する必要があります。

 

 評価への不満の解決策

 

不満 解決策
評価者の負担が大きい

・事務的な作業は可能な限り人事部が行う

・評価期間が始まる前に全社目標を決める

・評価基準を客観的なものにする

評価基準が不適切

・評価基準を重要なことに絞る

・評価基準を観察可能なことに限定する

・経営トップが評価手続きに積極的にかかわる

社員の反応が好ましくない形で出る ・評価制度の頻繁なモデルチェンジをいとわない
評価される側の不公正感 ・評価の前に被評価者から意見を求める
・面接で評価者・被評価者とも十分意見を述べる
・異議申し立てを可能にする
・評価者が被評価者の仕事をよく知る
・一貫した評価基準を用いる

 

(参考文献)

スティーブン・P・ロビンス『組織行動のマネジメント』(ダイヤモンド社、2009年)

ポール・ミルグロム、ジョンロバーツ『組織の経済学』(NTT出版、1997年)

柳澤さおり『目標管理とその効果的運用』(白桃書房、「人的資源マネジメント」2010年所収)

梅崎修、中嶋哲夫『評価者負担が評価行動に与える影響』(「日本労働研究雑誌」2005年12月号所収)

高橋潔「人事評価の急所」((公財)日本生産性本部生産性労働情報センター、2013)