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眼からウロコの人事評価―第6回 「評価基準が不適切」という問題

2015.05.29

  • 評価基準が不適切

前回このコラムで述べたとおり、日常起こりうる状況は無限であり、それらのすべてに対して「こういうときはこうしているか」というようなことを評価基準書に盛り込むことは不可能です。重要ないくつかの項目に絞り込まなければなりません。しかし、何が重要であると考えるかは担当する仕事によって違い、さらに、同じ仕事を担当する人であっても各人各様であるる場合が多く、会社全体で合意に達するのは非常に困難です。企業風土によっては、絶対に不可能であるとさえいえます。私も一度、こういうものを作ろうとして泥沼にはまった経験があります。

 

さらに、評価者に観察できないことが評価要素に含まれている場合もあります。たとえば「折衝力」とか「判断力」とかいったものを評価基準に含んでいる会社があります。こういうことが傍目からわかるものなのかどうかは疑問です。観察不可能なことは、評価者が恣意的に評価しなければなりません。恣意的に評価する場合、その仕事の経験年数が長い評価者ほど個人差(同じAさんを評価した場合でも、X課長とY課長とで点数が大きく異なるということ)が大きい傾向があります。また、やはり経験年数が長い人ほど、否定的な方向(減点方向)での評価になる傾向があります(注)。

 

では重要であり観察可能であることに絞り込んだ評価制度とはどういうものかというと、少なくともいま確立されている評価制度の中では、MBO(目標と自己統制による管理)とコンピテンシーが最も有力です。MBOが有力であるのは、多様である個人個人の仕事の中で、重要で達成度が測定できるものに絞り込んで評価基準にするからです。

 

コンピテンシーとは、高い業績を上げている人がどのように行動しているかということのうち、観察可能なもののことをいいます。lこれをそのまま評価基準にすることもできます。高い業績を上げている人がどのように行動しているかを、一企業が調べてまとめあげることは、まさに気が遠くなるような作業です。しかしすでに専門の研究者が膨大な研究結果をまとめたものがあり、これをそのまま使うことができます。

 

MBOに限らず、どのような評価制度であっても、設計や運用にはトップの積極的な関与が不可欠です。これは評価一般ではなく、MBOに限った話ですが、トップの関与が高いケースでは生産性上昇率が56%、関与が低いケースでは6%であったという研究結果があります(注2)。

 

(注)古川久敬(2011)「人事評価の運用の最適化によるパフォーマンス・マネジメント―評価者と被評価者の相互意識化およびフィードバックの促進効果」『日本労働研究雑誌』617

(注2)高橋潔『人事評価の総合科学』(2010)