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眼からウロコの賃金管理―第7回 等級制度の作り方_①等級とは何か

2015.05.08

 前回まで、賃金制度を設計する際の諸条件について述べてきました。それらを踏まえて、今回から具体的な賃金制度の作り方についてお話しします。

 

 賃金制度は大別して①等級制度、②賃金改定の制度、③賞与配分の制度、④諸手当の制度、⑤賞与配分の制度、⑥評価制度、そして(制度があるならば)⑦退職金制度から構成されます。まずは等級制度の作り方を取り上げます。

 

等級とは何か

 

 等級とは「これくらいの○○の人にはこのくらいの賃金」という大枠のことです。個々の社員の賃金を決めるとき、まず会社が等級を決め、その中で具体的にいくらの賃金にするかは評価をとおして実質的に上司が決めます。

 

 賃金を何に応じて払うかということを表す言葉として「○○給」あるいは「○○主義賃金」というものがありますが、○○のところに入る言葉が「能力」であれば能力給あるいは能力主義、「仕事」であれば職務給、「役割」であれば役割給ということになります(「職務主義」、「役割主義」という言葉はあまり聞きません)。

 

 制度上、等級とは賃金を決めるためのものに過ぎませんが、どこの会社でも等級が上であるほど序列(偉さ)も上であると認識されています。常識的に考えれば部長の方が課長よりも常に「偉い」ように思えますが、企業の現場では必ずしもそうではありません。どちらが「偉い」かは等級で決まります。

 

職能資格制度

 

 現状で、日本で最多数派の等級制度は職能資格制度です。「職能」とは職務遂行能力の略語です。職能には営業や製造、総務といった経営上の機能を表す意味もありますが、職能資格制度が指し示すところの職能は職務遂行能力です。

 

 「資格」とは、上述の「等級」と同じ意味で、部長や課長といった役職とは別に、企業の中での「偉さ」や賃金を決める基準です。医師や税理士のような、特定の職業に就くための条件としての「資格」ではありません。

 

 つまり職能資格制度は、職務を遂行する能力の高い低いによって等級を決める制度のことです。

 

 職能資格制度が普及した背景には、ポスト不足の対策として有効であることと、人事異動が行いやすいことがあります。

 一企業の中の部長や課長というポストには限りがあり、先任者で埋まっていれば、次の世代はいくら優秀でもそのポストにつくことができず、「腐って」しまいます。しかし「優秀な人」というお墨付きを与えることには定数を設ける必要がありません。優秀な人は何人でも上位の等級に格付けすることができます。

 

 また、定期的に人事異動をしていれば、それまで支店長だった人を、懲罰的な意味はまったくなくとも、別の支店の次長や課長にに異動させなければならないようなことも出てきます。そのようなときも職能資格制度に基づけば、「能力が落ちたわけではないから」という論理でそれまでどおりの賃金を払うことが正当化され、周囲の人たちも今までどおりの「偉さ」の人として扱ってくれます。しかがって異動が円滑に行えます。

 

 もっとも職能資格制度がもつこれらの都合の良さは、裏を返せば仕事の内容に対して不相応に高い賃金を払うということでもあり、現在の経済情勢において日本企業が求めていることではありません。職能資格制度の優位性は薄れてきました。

 

*参考文献

今野浩一郎・佐藤博樹『人事管理入門(第2版)』日本経済新聞出版社、2009年

佐藤博樹・藤村博之・八代充史『新しい人事労務管理(第3版)』有斐閣、2007年