賃金・人事評価のコンサルティング|リザルト株式会社

営業時間 平日9:00〜18:00

050-7108-8676

お問い合わせ

眼からウロコの賃金管理―第3回 いま求められる賃金改革とは 【第3回】年功給から職務給へ

2015.03.29

年功給から職務給へ

 

賃金問題

 ではどういう賃金改革が求められるのか。それは第1に年功給から職務給への転換と、第2に「ベースアップ」というときの「ベース」を廃止することです。

 

 労働基準法は、第11条で「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と謳っています。

 

 賃金が労働の対償(対価)であることは、当然であるように思われます。しかし、それでは同じ仕事をしていて同じような成績であっても、べテランと新人で賃金が違うことはどう説明されるのでしょうか。家族手当や住宅手当はどうでしょうか。相対的にきつい仕事でも楽な仕事でも、同期入社であればほぼ同じ賃金であることはどうでしょうか。

 

生計費に配慮することは当然か

 

 日本企業の賃金制度の特徴は年功色が強いことです。賃金が年齢に応じて高くなる傾向は欧米にも見られますが、日本はその傾向が特に顕著です。

 

 年功賃金の背景には、年齢とともに増大する生計費に配慮することが、道義的に正しいとする考え方があります。家族手当や住宅手当、年齢給、勤続給などの制度にこの思想が具体化されています。さすがに年齢給や勤続給という名前をそのまま残す企業は少なくなりましたが、定期昇給制度のもとで、年齢や勤続年数ごとに「最低でもこの賃金になる」というものはおのずと形成されます。これは実質的に年齢給あるいは勤続給にほかなりません。

 

 賃金の面で生計費に配慮することは、日本では当然のように受け止められていますが、国際的には必ずしもそうではありません。たとえばアメリカでは①知識・技能、②精神的・身体的負荷、③責任度、④作業条件の4つが賃金決定の要素であるとするのが政府の公式見解です(笹島芳雄『アメリカの賃金・評価システム』、2001年、日経連出版部)。

 

 アダム・スミスは『国富論』の中で、賃金格差が生じる要因として①労働内容の快適度の差、②仕事の安定性の差、③必要な知識、技能、技術を獲得することの難易度と要した費用の差、④職業そのものに与えられる信用度の大小、⑤その職業で成功する可能性の差をあげています。これらのどこにも生計費という言葉はありません。日本においても非正規社員の賃金は、生計費にまったく配慮がなされていません。

 

世界の賃金制度は労働対価が基準

 

 明治学院大学の笹島芳雄教授は「日本以外の中国や東南アジア諸国も含めて、世界各国の賃金制度は労働対価が基準」であると言っています。賃金が労働の対価であるならば、賃金は職務に応じて決まるはずです。

 

 年功給から職務給への転換は、高年齢の労働者にとって必ずしも不利なことではありません。既得権であるという理由だけでは、会社が労働生産性以上の賃金を払えるわけではなく、賃金が割高である人はともすればリストラや「追い出し部屋」送りの標的になりやすいからです。これらの悲劇が起こっているからこそ、賃金制度の改革が必要です。