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賃金制度がない会社でもできる、賃上げの方法

2015.03.19

 大企業の間では大幅に賃金を上げる動きが盛んです。これがなかなか中小企業まで波及していないといわれます。その原因のひとつとして中小の場合、賃金制度が未整備で、賃上げをしたくてもその方法がわからないということがあります。

 

 そんな中小企業のために、簡単にできる賃上げの方法を紹介します。

 

1.簡便法

 

 賃上げのもっとも簡単な方法は、次の式で額を決めることです。

 

   賃上げ額=α+現在の基本給×成績係数×β

 

 αは定額です。成績にも職位にも、現在の賃金の高い低いにも関係なく一律です。αを仮に1,000円とすると、月給20万円の人にとっては0.5%に相当し、月給50万円の人にとっては0.2%に相当します。賃金が高い層は世間並みだが、低い層は世間相場に比べてもなお低いという会社の場合、この部分を厚くします。そういう認識がない場合、αはゼロでも結構です。

 

 成績係数は次のとおりです。

 

  S  0.06
  A  0.05
  B  0.04
  C  0.03
  D  0.02

 

 賃金制度がない会社であれば当然、評価制度もないはずです。そのような場合、成績は主観でつける以外ありません。ただ、賃金制度がないような会社であれば規模も小さく、全社員に社長の目が行き届いていることでしょう。どの社員も社長が評価するのであれば、主観による評価であっても弊害は比較的小さいものにとどまります。社長と専務が相談して決めるなど、複数人が参加すればなお良いでしょう。

 

 βは賃上げ額を調整するための係数です。上に揚げた成績係数を単純に平均したら0.04です。これをそのまま成績に依存する賃上げ率としたら、この部分だけで平均4.0%になってしまいます。よほど余裕がある企業でなければ実現できない数字です。それをこのβで調整します。

 

 βは次のような表をスプレッドシートで作ることによって簡単に決められます。

 

α=1,000

β=0.20 

 

a

現在の基本給

 

成績

 

c

成績係数

 

 d

=a×c

 

d×β

成績依存

昇給額

α

一律

昇給額 

α+d×β 

合計

昇給額

阿部

伊藤

上田

遠藤

岡田

240,000

360,000

380,000

470,000

290,000

C

S

B

D

A

0.03

0.06

0.04

0.02

0.05

7,200

21,600

15,200

9,400

14,500

1,440

4,320

3,040

1,880

2,900

1,000

1,000

1,000

1,000

1,000

2,440

5,320

4,040

2,880

3,990

合計

平均

1,740,000

348,000

   

 67,900

13,580

 13,580

2,716

5,000

1,000

18,580

3,716

 

 

 αとβに適当な数字を入れると、平均賃上げ額が瞬時にしてわかります。スプレッドシートにちょっと詳しい人であれば簡単に作られる表です。平均賃上げ額が予算と一致するように、αとβにいろいろな数字を入れて最終的な落とし所を決めます。

 

 昇給予算はひとり4,000円。一律昇給部分が1,000円あるので、成績依存昇給は3,000円。『a×c』の平均が13,580なので、βは3,000÷13,580で0.22だ・・・という具合に、予算から逆算して決めることもできます。

 

 ちなみに経団連の集計によると、中小企業の、2014年の平均賃上げ額は4416円です(一般社団法人日本経済団体連合会『2014年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)』より)。

 

2. 現在の賃金水準を考慮する賃上げ法

 

 もう少し複雑な仕組みでも良ければ、賃上げ額は次の式で決めるとなお良いでしょう。

 

    賃上げ額=現在の基本給×成績係数×水準係数×β

 

 成績係数は前掲のものと同じです。

 

 水準係数は次のとおりです。職位と、現在の基本給の水準に依存します。 

 

水準区分

 部長級

課長級

係長級 非役職 水準係数

1Q

2Q

3Q

4Q

          ~437,000 

 437,001~526,900 

 526,901~616,800 

 616,801~

          ~357,300

 357,301~419,850

 419,851~482,400

 482,401~          

           ~279,500

 279,501~324,600

 324,601~369,700

 369,701~        

         ~196,400

 196,401~244,600

 244,601~292,800

 292,801~          

1.00

0.75

0.50

0.25

 

 「Q」は「四分の一」という意味です。水準係数は現在の賃金水準が高いほど小さい数字になります。各人の賃金を、その役職の標準的なものとして想定する金額に早く近づけるためにあります。

 

 無論この表は一例に過ぎず、各企業が独自に決めるべきものです。ただ、この表は厚生労働省が集計している「賃金構造基本統計調査」による、従業員数100~499人の企業の実態を参考にして数字を決めています。このままでも十分使える数字であるはずです。

 

 この方法では、賃金が低い人ほど賃上げを促進し、賃金が高い人ほど抑制するという仕組みはすでに組みこまれています。したがって前述の簡便法のように、一律昇給部分であるαは用いません。

 

 この方法でも、βはやはり表計算シートを作ることによって簡単に決められます。逆算によっても決められます。

 

β=0.5

   

a

現在の基本給

 

成績

b

成績係数

 

水準区分

c

水準係数

a×b×c

 

a×b×c×β

昇給額

阿部

伊藤

上田

遠藤

岡田

非役職

係長

課長

部長

非役職

240,000

360,000

380,000

470,000

290,000

C

S

B

D

A

0.03

0.06

0.04

0.02

0.05

2Q

3Q

2Q

2Q

3Q

0.75

0.50

0.75

0.75

0.50

5,400

10,800

11,400

7,050

7,250

2,700

5,400

5,700

3,525

3,625

合計

平均

 

1,740,000

348,000

       

41,900

8,380

20,950

4,190

 

 

給与辞令を出そう

 

 賃上げをやったら必ず給与辞令を出しましょう。出さなければ、せっかく賃上げをやっても、やったことが社員に伝わりません。

 

 どのようなルールに基づいてやったのかということについての、説明会をするとなお良いでしょう。

 

 これで賃上げができる会社が1社でも増えれば幸いです。