弊社が推奨する給与体系では、給料は「単調増加」、つまり人によって程度の差こそあれ、上がる一方です。これについて、「上がるだけでなく、成績次第で下がる仕組みも入れられないか」というご相談をよく受けます。
しかしどの会社でも、給料を下げる仕組みがすでにあるはずです。
「仕事が著しくできない場合は解雇する」という旨の条項は、どの会社の就業規則にもあるはずです。
たとえば厚生労働省のモデル就業規則にも、解雇事由のひとつとして「勤務成績又は務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき」があります。
この規定に相当することを証明したうえで、退職が良いか、それとも賃金カットが良いかを本人に選択させれば、賃金を下げて雇い続けることができます。
もっともこの方法は、法的には通用するものの、経済的には非効率であり、お勧めしません。
人間には「損失回避」といって、同じものでも得ることより失うことの方を重視する傾向があります。
唐突な話ですが、想像してみてください。
今日、宝くじで1万円当たったとします。
しかし換金に行った帰り道で、その1万円を落としてしまいました。
差し引きゼロですが、嬉しさも悲しさも残らないでしょうか。
一般的には、1万円分の悲しみが残るはずです。
失う悲しみは得る喜びの約2倍の心理的インパクトがあると言われているからです。
1万円を失った悲しみは、2万円もらった喜びでやっと帳消しにされます。
損失回避の心理があるので、人は賃金を下げられると、それ以上にやる気が下がってしまいます。
会社側としては、かえって効率が悪くなります。
アメリカでは「随意雇用」といって、解雇が国際的に特異なほど広範に認められています。
解雇が原則自由であるならば、賃金カットが良いか解雇が良いかを選ばせる機会はたくさんあるはずです。
しかし経営者は賃金カットを選ばず、解雇を選ぶと言われています。
その方が、効率が良いことを知っているからです。
けっして、解雇を奨励するわけではありません。
賃金を下げれば、貢献度に見合った賃金が実現できると考えるのは短絡的だということです。
