働く人の給料が上がらないのは、経営者が強欲であり、労働分配率を上げないからだという説があります。
労働分配率とは、付加価値に占める人件費の割合のことです。
付加価値とは、企業活動によって新たに作られた価値のことです。
たとえばパン屋さんは小麦粉や塩、砂糖からパンを作ります。
パンは、同じ重さの小麦粉、塩、砂糖よりはるかに高い値段で売れなす。
パンの値段と小麦粉の値段の差額が付加価値です(厳密なことは捨象します)。
一見すると、付加価値の大部分を人件費に回す経営者は無欲であるように思えます。
しかし経営者で、できるだけ安く人を働かせようと考えている人は少数派です。
むしろ給料は、上げたいけれど上げられないというのが実情です。
労働経済学では「効率性賃金」といって、賃金は高い方が、働く人だけでなく会社側にとっても有利であると考えられています。
もっとも、このことはわざわざ労働経済学の理論を持ち出すまでもなく、経営者はすでに体感で理解しているように思われます。
それなのになぜ労働分配率は上がらないのでしょうか。
「コブ・ダグラス型生産関数」という理論があります。
(数式の部分は読み飛ばしてくださっても結構です)
付加価値(Yで表す)は
Y=A・K^α・L^(1-α)
という式で決まるとする考え方です。
ただし
A=生産性(稼ぐ技術)
K=資本ストック残高
L=労働投入量
α=資本分配率(付加価値に占める利益と減価償却費の割合)
1-α=労働分配率
です。
つまり付加価値は稼ぐ力と資本ストック残高、労働投入量、労働分配率の組み合わせによって決まるという説です。
経営者は常に、付加価値が最大になるような、これらの組み合わせを模索しています。
もしも労働分配率(1-資本分配率)を今より上げれば、付加価値も今より大きくなると考えているならば、すでに労働分配率を上げているはずです。
そうしないのは、労働分配率を上げたら利益が減って、付加価値も減ってしまう。ひいては事業を継続して行くことが困難になると考えているからです。
つまり労働分配率は、パン屋さんが小麦粉と砂糖の配分比率を何対何にしたら一番おいしいパンが出来上がるかを追求しているのと同じように、経営者が人件費と資本コストの配分比率を模索することによって決まっています。
労働分配率が上がらないのは、上げたくても上げられないからであり、経営者が強欲だからというわけではありません。
